アメリカに来て間もないころの話だ。
留学してからというもの、私はサッカーばかりしていた。
その日も友人と、夜の大学のサッカーグラウンドへ向かい、ボールを蹴っていた。
夜とはいえ、グラウンドでサッカーをしているだけ。日本にいたころの感覚では、何も問題ない話だった。
大学構内を巡回している警察、いわゆるキャンパスポリスのパトカーが、近くを走っていた。
でも当時の自分には、まだ完全に日本の感覚が残っていた。
「別に悪いことをしているわけじゃない。警察が近くにいても関係ない」
そう思っていた。
◇
その瞬間は、突然訪れた。
暗闇の中で、いきなり強烈なサーチライトが自分たちに向けられた。
眩(まぶ)しさと驚きで、とっさにライトを避けた。
そして気がついたら、まるでアニメの『ルパン三世』のように、二人で散り散りになって逃げていた。
何も考えていなかった。
体が勝手に動いていた。
茂みの中に逃げ込み、息を潜めた。
「ここに隠れていれば大丈夫だろう」
そう思った次の瞬間、再びサーチライトが自分を照らした。
「ホールドアップ!!」
条件反射で両手を上げた。
少なくとも、そのときの自分には、そうするしかなかった。
でも、頭の中はほとんど真っ白だった。
何もしていないのに、なぜ逃げてしまったんだ。
やばい。この国は怖い。
俺、どうなるんや……。
そんな言葉が、頭の中をぐるぐると回っていた。
◇
屈強な警察官が二人、こちらに近づいてきた。
そのままフェンスに押し付けられ、取り押さえられた。
「何をやっていたんだ」
その言葉だけは聞き取れた。
拙(つたな)い英語で、必死に説明した。
「サッカー、サッカー!」
警察官二人は怪訝(けげん)そうな顔をしながら、サッカーボールを確認し、身体チェックをした。
しばらくすると、二人の表情が変わった。
「おいおい、こいつ、本当にサッカーをしていただけみたいだぞ」
そんな空気になった。
すると、さっきまで厳しい表情だった二人が、急に優しい顔になった。
「夜遅くに出歩かないように。君たちは、ドラッグの売買をしているのかと思ったんだ」
そして、
「向こうに逃げた友人にも、そう伝えておきなさい」
と言われた。
ちなみに、逃げた友人は、ずっと車の下に隠れていたらしい😆。
◇
何とか事なきを得たが、これが自分にとって初めての海外の洗礼だった。
日本の感覚のまま海外に出ると、思わぬ危険やトラブルに巻き込まれることがある。
サッカーボール一個で逮捕されるかと思った夜に、それを思い知らされた。
そして同時に、こう思った。
日本って、本当に平和な国なんだな、と。
◇
■ 中学生のみなさんへ
世界は広い。
そして、日本では当たり前だと思っていることが、海外では通じないことがあります。
逆に言えば、海外に出ることで初めて、「日本はどんな国なのか」が見えてくることもあります。
英語を学ぶことは、単語や文法を覚えることだけではありません。
違う文化。
違う常識。
違う価値観。
そうした、自分とは違う世界を知るための入口でもあります。
だからこそ、英語は面白い。
そして、勉強する意味があるのだと思います。
いつか、自分の足で世界に出てみてほしい。
教科書の中では知ることのできない、新しい景色や価値観に出会えるかもしれません。
そのときは、サッカーボール一個持って😆。
※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
もしこの話が誰かの心に届いたなら、「みとばな」の名前と一緒に紹介していただけると、とても励みになります。

